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経営戦略2:差別化とは
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マーケティング力アップ
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●差別化とは 経営戦略が単純と言い切っているので(簡単とは言ってないので念のため)、差別化戦略が複雑では意味がない。 差別化戦略も基本的には単純である。競合他社と違っていればいい、というものでは無い。劣っている方向で差別化しても全く意味がない。当然だ。 ではどのように違っていればいいかと言えば…… 「お客様にとって価値がないところで差別化しても意味がない」 ということだ。差別化とは、 「お客様に、より良い価値を提供する」 ということが本質なのだ。
●3つの差別化方法 差別化の方策は、基本的には3つある。 1)商品・サービスそのもので差別化する 2)提供方法・付帯サービスで差別化する 3)顧客対応力で差別化する ということだ。 なぜか? それがお客様が手にすること・ものだからだ。では、一つずつ見ていこう。
1)商品・サービスそのもので差別化する 当然ながら、商品・サービスで差別化するのがまず第一に来る。 典型的な方法は4つだ A)スピード:同じことをより早くできる パソコンを買うとする。どんなパソコンでも、普通にMSオフィスは使えるだろう。しかし、処理速度が速ければ、その方が快適に使える。同じことができるとしても、早くできるほうが良い。 B)同じことをより便利にできる テレビの基本機能は番組を受信する、ということだが、それにしても、リモコンがあれば便利だ。リモコンがなくともチャンネルは変えられるが、便利なほうを選ぶだろう。 C)高品質:同じことをよりよくできる TVの場合、見ている番組は同じにしても、より高画質・高音質の方がいいだろう。スピーカーなどのオーディオ製品を買うとしよう。どんなスピーカーを買ったって、壊れてない限りそこそこの音は出る。しかし、より良い音が出る方を選ぶだろう。 D)差異化:違うことができる 製品を売っている場合、例えば、ビデオデッキを買うとしよう。あるビデオデッキだけには、CMカット機能がついていた。それが便利なのであれば、それを買うかもしれない。 小売店の場合、売っているものは同じにしても、商品・サービスについて、色々教えてくれる、相談できる店員がいるところのほうがいい。
2)提供方法で差別化する E)スピード:より早く提供される 同じものを買うのなら、早く手に入れられる方がいい。待たされるのは誰だってイヤだ。同じようなハンバーガーを提供するのであれば、早く買える方がいい。だからマクドナルドに行くのだ。 F)利便性:より便利に買える、入手しやすい 同じものを買うのなら、買いやすいほうがいい。同じようなハンバーガーを売っているのなら、より近くにある店にいくだろう。同じものだとわかっていれば、自宅にいながらにして届けてもらうほうが便利だ。だからカタログ通販、ネット通販などが流行るのだ。同じ本を買うのなら、アマゾンで届けてもらうほうが便利だ。
3)顧客対応力で差別化する G)安心・信頼 同じものを買うにしても、安心できるところで買えるほうがいい。返品できる、電話相談ができる、などのところから買えるほうが安心だろう。同じものを同じ値段で買うなら、愛想の良い店員から買う方がいいだろう。なじみのある理容店なら、自分の好みを知ってくれているので、安心して任せられる。自動車を買うなら、高い買い物でもあり、その後の対応を安心してお任せできる営業担当から買いたいだろう。 同じものを買うなら、信頼できるところ・人から買いたい。特に高額な買い物や大法人顧客相手のビジネスの場合には、リスクが大きいので、若干価格が高くても、信頼できるところに任せたい事も多いだろう。 H)情報提供 スーツ・洋服を買うなら、最近のファッションのトレンドや、顔色とスーツの色の相性などのアドバイス・情報を提供してくれるところで買いたいだろう。パソコンを買うなら、色々な機種の性能の違いが使う際にどう影響するのかを教えてくれる店員さんがいるところがいい。 同じモノを買うなら、色々なアドバイスをしてくれるところがいい。特に、高額な買い物、売り手と買い手の知識のギャップが大きい買い物の場合はそうなる。
●「ブランド」で差別化できるか? さて、これしか無い、というと、そんなことはない、「イメージで差別化できる」という反論がマーケターから来そうだ。昨今、経営者の意識も大分「ブランド」に向いてきたようだ。それ自体を否定するものではない。 では、ソニーのブランドイメージは何だろうか? 考えてみて欲しい。 ・革新的・新しさ などでは無いだろうか? では、そのイメージはどこから来ているのだろうか? TVCMからだろうか? ソニーと同じTVCMを、アイワが流したら、アイワもソニーと同じイメージを持たせることができるのだろうか? 違う。ソニーのイメージは、 ・ウォークマン などの製品と離れて議論することはできない。これらに共通するのが、 ・革新的・新しさ というイメージなのだ。ブランドイメージは、それ自体が商品などから独立して存在するわけではない。CMでブランドイメージができるわけではない。もしそうなら、会社のイメージが悪くなったときには、CMを流せば全て解決、ということになる。 CMは、製品の価値を伝えるという点では非常に重要な役割を果たす。しかし、イメージだけを独立して形成することはできない。すなわち、ブランドイメージというのは、商品・サービスが提供する価値を中核として生まれてくるものなのだ。 そして、ブランドは、作ろうとするものではあるが、基本的にはお客様によって作られるものである。お客様が、商品・サービスそのものや、その提供方法、広告などのコミュニケーション、全てがからみあった認識だ。ブランド広告をうてば、お客様のアタマの中をコントロールできるなんていうのはマーケターの傲慢もいいところだ。 できるというのなら、 ・100円ショップのCMをつくって、スーパープレミアムブランドに仕立てあげていただけないでしょうか? もちろん商品も、商品価格も変えずに。 ・ハーゲンダッツのアイスクリームは、非常にコスト効果が高い、低価格商品である、というイメージを植え付けていただけませんか? もちろん商品も商品価格も変えずに。 この実現性が証明できるのであれば、この部分を削除し、お詫びすることをお約束しよう。もちろん広告費はそちらもちで。 まず無理だろう。なぜなら、お客様が信用しないからだ。100円のものを売っていながら、「我が社は超高級ブランドです」と言って、誰が信用するだろうか? むしろ、「嘘つき」と言われ、逆効果にすらなりかねない。
●重要なのは一貫性 しかし、ブランドが重要ではない、と言っているわけではない。ソニーが持っている独特の世界観、そのようなイメージは大きな資産だ。スターバックスの持っている世界観にしても同様だ。吉野家のブランドもそうだ。これらの会社のイメージは、提供している価値と、製品・CM・価格などが整合している。吉野家は典型で、「早い、うまい、安い」のコピーが示すように、 と整合している。一貫性があるのだ。重要なのは、一貫性なのだ。この、一貫性をとるのは、経営者の仕事だ。各部門の担当者は、自分がやりたいことをやりがちだ。開発部門は作りたいものを作りたがる、広告部門はつくりたいCMを作る、店舗立地部門は作りたいところに店舗を作る、と、部分最適の罠に落ちてしまう。
●一貫性をとるのは経営者の仕事 会社の各部門を指示・統率し、一貫した価値をお客様に提供するべくコントロールできるのは経営者だけだ。各部門長が、自主的に各部門の利益(金銭的利益だけとは限らない)を犠牲にし、全社的な整合性を考えることはまずあいれない。各部門間の整合性をとり、お客様に一貫した価値を提供するのは経営者の仕事なのだ。そして、それこそが、まさに経営者の仕事なのだ。 だからこそ、先ほど書いたように、100円ショップを「高級ブランド」として位置づけることは意味がない。取り扱う商品と、ブランドに整合性が無いからだ。 それを防止し、一貫した戦略を形成するための道具が、私の開発した「戦略BASiCS」というツールだ。詳細はこちらの本に譲ることにする。
●価値の提供 以上をまとめると、 差別化戦略とは、「競合他社より、いかに優れた価値をお客様に提供するか」 ということになる。当然、より優れた価値を提供する製品・サービスが選ばれるわけだ。 だから、経営者の仕事は、「どのような価値を提供するのか」ということを決めることでもある。では、価値を提供する、ということは、具体的にはどのようなことか、が次のポイントとなる。この辺から、経営戦略とマーケティング戦略の垣根が無くなり、一体となってくる。
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